●創業後、数年のうちに業績が向上すると、自分たちが偉いと錯覚する。市場の、顧客の評価がそれなりにあったからこその結果なのだが、自分たちがすごかった、偉かったと慢心する。勘違いする。そして、規模の拡大、膨張に走る。女性の事務職も、3名でなんとかぎりぎりやっていたのを、5名必要と錯覚する。建物のも、もっと大きな広い場所が必要だと勘違いする。そして、人員は増大し、事務所は大きなビルに引越し、あげくには自社ビルを買い取ったり、建てたりする。
●管理部門の人員が増えたり、本社ビルが大きくなっても、それが顧客価値の増加に本当につながるのか?誰も、そういうことは考えずに、ひたすら自分たちが中心の価値判断になる。もっと売上を上げるにはどうするか、利益を増大させるにはどうすればいいか。利益と売上が先行し、創業の想いや経営理念の実現などは、完全にお題目になる。いや、経営理念の策定すらやらない企業が多い。行け行けどんどんのときはいいが、一端つまずくと土台が脆弱なだけに、弱い。
●この辺りでトップが揺らぎだす。資金が窮屈になり、さらに売上を無理やり伸ばそうとする。売上を伸ばすには、先に資金が必要だという大原則をご存じない。それまでに得た資金は、無駄なものに投資したり、固定資産を増やしたり、遊興的な費用に消えたりしている。少しでも社員の教育や、将来の先行投資に向けられていたら、ずいぶんと結果は違ったのに。確かに、企業経営の原則は、しっかり儲けて、しっかり使うことだが、その使い道を勘違いしている。
<修正するときには勇気が要る>
●一度狂った歯車を修正するには、時間もかかるしエネルギーもかかる。まして、トップの決断、勇気が要る。それは、裏返せば自らの否定につながる可能性もある。自己批判、自己反省、懺悔をしないといけない。当社のオフィスに来て頂いて、ようやく反省することが出発点だと分かり、そこから始まるケースも多い。これは、今後時間がかかる。もっとも、ご自分でわかっていらっしゃる企業のトップは相談にも来られないかもしれないが。しかし、トップが一歩を踏み出さないと、何も変わらない。
●新しい取り組みをしたり、合理化の努力をしていないから、ずっと方法が進化していない。旧態依然とした方法でやっている。さて、では何とかしようと思っても、それからでは時間がかかる。即効性のある体制には、すぐにはできない。それに比べて、社長自らが勉強し直し、大学院の博士課程に入られた企業のトップにもお目にかかった。その勉強された技術、大学との連携した結果が、現在の企業の業績にも今後大きく寄与することは間違いない。いまは、まだ時間がかかるが結果は早晩見えてくる。
●逆の方向に走るのと、正しい方向にゆっくりでもいいから走るのとでは、数年経てば大きく結果は異なる。何がその違いを生んだのか。それは、好調時期でのトップの危機感だ。結果がいいことを錯覚し、自らの力でできたのだと慢心する企業やトップと、このまま好調が続くはずがない、いつかは業績が低迷すると読んで、はやくから次の技術開発に取り組まれた企業との差が、ここで大きくついてくる。もう、先行している企業の背中は、はるかかなたに引き離されている。
<変わるために早く一歩を踏み出す>
●業績が低迷し、資金繰りが難しく、継続が困難な企業のトップほど、みかけ明るく脳天気なことが多い。脳天気は言いすぎなら、楽観的な方が多い。業績が安定している企業のトップほど、危機感がある。何か始めないといけないという切迫感がある。資金繰りも何とかなるだろうと、思い違いをしているトップの方も多い。今月は、まだ金融機関に返済をしていない、社会保険料の滞納もしていると、堂々と開き直っておっしゃる企業のトップもある。何か勘違いされているとしか、思えない。
●確かに会社を変えていくには、時間もエネルギーもかかる。今日号令して、明日から見違えるように変わるわけがない。身体に染み付いたものをそぎ落として、新しい皮袋にお酒を入れ替えるには、相当な時間がかかる。コストもかかる。しかし、逡巡しためらっていては、時間がかかるだけだ。こういう方向だと決心すれば、一直線に進むことだ。じっとしていると、そのうちにご臨終を迎えることになる。祇園祭だ、宵山だと言っている場合ではない。
会社成岡マネジメントオフィス
代表取締役 成岡 秀夫
平成21年7月20日号より
当社も12年目を迎え業績は順調に推移していると自覚しています。
「事務所が狭くなってきたので、もっと広いところに移ろうか?」
「借りるより、購入したほうがいいのでは?」
ついつい、己の現実の状況を理解せず、妄想してしまいます。
かの鴨野長明の方丈記ににもあるように、世の中の変化を理解して適正な行動をしなければならないと思いました。
反省!!反省!!
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。」
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